
今回取り上げる車両はLi-125 Ser1です。しかし只のSer1では無い所がKANEBAN。
初期のロットである通称FrameBreatherと呼ばれるタイプの車両です。
TV-1から始まったチェーンドライブモデルですが、手探り状態な作りのTV-1から過渡期となる途中の
このモデルでしか見れない珍しい所を紹介して行きながら進めていきたいと思います。

何故FrameBreatherと呼ばれるかですが、その他のモデルでは単に飾りのグリルが付くだけの場所に
エアインテークが有るからなのです。まぁTV-1も同じ構造ですからLi-1だけの通称と言う事になります。

エアインテーク下のグリルもプレス型だけでは無く実際に穴が開いています。
ここもTV-1と同様なんですが実際にはリアフェンダーが丸見えになってしまったり雨水の浸入等、
お世辞にも良い処理とは言えません。

エアインテークを内部から見た所ですがベローを介してメインチューブに繋がっているのが解ります。
このベローですが大変肉厚で再度取り付けるのが厄介な代物です。
しかし何故こんな大掛かりなインテーク構造にしたのかは大いに悩む所ですね。

キャブレター側からのショットですが、LDの物に似てる丸いエアクリーナーの前に筒状の物があります。
なんと此れもエアクリーナーなんです。
どんな意味が有って2つもエアクリーナーを付けたのか不可解な所です。
実際TV-1や150ccのFrameBreatheにはこのエアクリーナーが無く
L字の只のジョイントパイプのみの構造になっています。

筒状のクリーナーとフレームのジョイント部分です。
筒状のBoxの中にはDelorto製の乾式のエレメントが入っており、
Boxの外にもDelortoのコーションが貼ってあります。出来ればこのコーションも作り直したいですね。

キャブレターはSer2まで使われるごく普通の物が付いています。
この車両は150ccに排気量を上げる予定なのですがセッティングパーツの少なさから
このキャブレターで調子よく動作してくれるかが心配なところです。

他にもこのモデルならではの部品は沢山有ります。
スプラッシュプレートと呼ばれるこの板も以後の物とは違い短いものになっています。
よくぶつけてヘロヘロになっているパーツですがこの長さだとそんな心配も無いかも知れませんね。

ハンドルバートップですが125ccですので勿論標準でメーターは付いていません。
その代わりにダミーキャップが付くのですが、Vespaの其れがプラスチック製なのに
Lambrettaの物はアルミ製の物が奢られています。

かなりわかり辛い写真で申し訳無いのですがマフラーとエキゾーストパイプのジョイント部分です。
一般的なSer1-2に使われているマフラーのエキパイジョイント部分はもっと短いのですが、
FrameBreatherに付く物は20cm近くも有り後のモデルとの互換性が全く有りません。
マフラーの詰まり等が有った場合は悲しいことに丸々以後のモデルの物に交換するはめになってしまいます。

ブレーキペダルに直接ブレーキスイッチが付くのも珍しいですね。
詳しい事は定かでは有りませんが以前扱ったTV-1とは違うタイプのスイッチが付いています。
元々オプション扱いのブレーキランプですから色々なメーカーのスイッチが使われていても
不思議では無いんですが。ここもオリジナル通りにスイッチをリペアしていきます。

いきなりピンボケ写真で失礼します。Vespaと違いパイプフレームを持つLambrettaの場合
ワイヤーや配線の固定にアルミのバンドを使うのですが、
初期のモデルではフェンダー裏にワイヤーへのグリスアップ用に固定バンド兼グリスニップルが有ります。
フルレストア済みと謳う車両でも結構取り外されている事が多いパーツです。
KANEBANは?もちろんオリジナル通りに再生します。

ハンドルトップを外した状態です。この車両の様にオリジナル状態をキープしている場合は
工場出荷時のパーツの組み合わせや配置などが解るなりよりの資料となります。
個人で再生を楽しむ場合でもこの様に元の状態の画像を残しておけば再度組み立てる時も
収まるべき所にパーツを納めることが出来ますね。
特にワイヤーの取り回しに関してはオリジナル通りに組まないと操作が重くなったりと弊害が出てきます。

FrameBreatherの要、エアー取り入れ口とラバーブーツです。
ご多分に漏れず経年変化で硬くなったラバーパーツやひび割れ等を起こしたプラスチックパーツは
金属と違い再生がやや難しい材質になります。

特にリアグリルの固定具と兼用のプラスチック製エアー取り入れ口は
元々ナットが鋳込まれている所から破損してナット自体が欠損してしまっています。

そこで登場するのがプラスチックリペアです。
粉末状のプラスチックを溶剤で硬貨させ母材と溶着させるモノなのですが
新たにナットを埋め込み周りをリペア剤で補修していきます。

補修後です。強度が必要な場所には余り適さないリペア剤ですが
此処で使うボルト径はM5ですので其れほどトルクをかけないので此れで十分だと思われます。

エンジンに関してFrameBreatherならではの所を何点かご紹介します。

普通上下分割式のチェーンガイドは一体の物が付いています。
同じ125Ser-1でも後期の物は分割式の物が付いていますので極初期だけの仕様なのでしょう。
しかしアッパーのテンショナーの方が減りが早いですから分割式にして正解でしたね。
フライホイール側のマグフランジもグリス封入式潤滑では無く混合気で潤滑させる為
手前にオイルシールが入りません。VespaのET3や100と一緒の方式です。
潤滑の事を考えるとこの方式でも何ら問題は無いのですがこの後グリス封入に変えたのは不思議です。
同じような事はVespaの160GSや180SSにも言えるのですが一次圧縮を上げる為だったのでしょうか?
クランク本体は高年式の物と比べてさほど違いが無い様に見えますが細かい所が違い、
勿論高年式のクランクとの互換性は全く有りません。
しかしコンロッド長自体は高年式のLI/SX等と同じなのでコンロッドの入れ替えは可能です。
ビッグエンドのガタが出ている場合等は問答無用で交換しましょう。
スモールエンドはニードルケージでは無く砲金のブッシュが圧入されています。
ニードルケージに比べて磨耗しやすいブッシュですからブッシュの入れ替えよりも
後々の事を考えればコンロッド毎ニードルタイプの物に交換するのが得策だと思います。
クランクに圧入されいてるベアリングも専用のベアリングプーラーで抜き取ります。
芯出し前のクランクで有れば多少の衝撃を与えても問題無いのですが
出来る事なら叩いたり無理をしてベアリングを外す事をせずに専用の工具を使いましょう。
無理は部品を壊すだけでは無く怪我の元です。
完全に分解したエンジンケースとその他アルミパーツです。
流石にここまで古い車両だとアルミの場所によっては腐食が激しくオイル染みもなかなか取れません。
普通のバイクと違って普段は見えないエンジンですが矢張り外装が綺麗なのにエンジンが汚いと台無しです。
毎度毎度しつこいよ!と言われそうですがウエット加工を施したケースです。
オイル染みは皆無にまで取れしかも鋳肌を崩さずに綺麗に出来ます。
KANEBANでは一から仕上げる車両のエンジンに関しては全てウエット加工を施してから
組み立てています。真鍮製のフライホイールファンの光り方が凄いです。

通称サイレントブロックと呼ばれるエンジンマウント部分も新品に交換します。
この部品も以外と交換される事が少ないのですが経年変化によって左右の潰れ具合が変わり
エンジンが傾いたり振動をちゃんと吸収出来なくなってしまいます。
特殊工具を使って圧入するのですが無理な力を掛けるとケースの破損もあり得るので
事前にケースに余熱を与え無理な力をかけずに圧入できる様にします。
余談ですが、サイレントブロックにはLI系で使われている小さい物と
SX/TV系で使われている大きい物が有ります。
LI系等で排気量を上げたり高度にチューニングした車両では
大きいタイプのサイレントブロックに交換する事をお勧めします。
比較的丈夫なランブレッタのギアですが此の車両は信じられない位にギア周りの状態が良い車両でした。
多分ワンオーナーで有る事は確かでしょうし、そのオーナーですら殆ど乗らずにいたと思います。
本当こういう車両は再生が楽でいいです。
クラッチバスケットとクラウン部分です。
以後のモデルと違いクラスターギアのセンターナットを固定するタブワッシャーの設定が有りません。
本来センタースプラインとクラウンを固定するピンの一本が長く、そこにタブワッシャーを固定するのですが
それが無いんです。仕方なくロック剤を塗り固定させました。
4ポールタイプのフライホイールバックプレート自体は以後のモデルとさほど変わりませんが
配線のジャンクション構造がTV-1と同じになっています。
ここも一度総て分解しプレートはウエット加工、配線、ポイント、コンデンサーは新しいものに交換します。
ベークライト製のジャンクションですが便利な様で実際は結線し辛く余り頭の良い構造では無いです。
パーツ単体の見た目は非常に良い形をしてるんですけどね。
でもラバーブーツで隠れて見えなくなっちゃいます。残念。
塗装と再メッキの上がったハンドルパーツです。
ショートパーツは新品、真鍮製のプーリーはウエット処理しています。
組み付けの際には塗装バリを取り摺り合わせを行い稼動部にグリスを塗りながら組み付けます。
本来と言うか一般的にパフ処理されているハンドルサポートが塗装されているのは
何故かLI125だけの特徴です。此はSer3まで続きます。
元々オプション設定のメーターですのでドラムにメーターギアが付いていません。
流石にメーターが無いと・・・とのオーナー様からの要望で
スピードメーターを付ける為にメーターギアを圧入します。
が、この写真、実は対オイルシール用のリングを入れ忘れています。
もちろん後で気が付いて入れましたのでご心配なく。
フロントフォークの作りもこの時期のモノは凝っています。
以後のモデルではUの字に曲げたパイプをステムチューブに鋳込んでいますが、
このモデルではJの字のパイプ2本を別々に鋳込んでいます。
剛性の面でどちらが有利かは言うまでも無いですが、
ベスパに比べてランブレッタはこの様な一見無駄とも思えるような凝った作りが色々有って面白いです。
ステムベアリングのロアーレースにはダストカップが入らない代わりにスペーサーが入ります。
勿論ダストカップが有った方がグリスへのゴミの噛み込みを防止出来るので良いのですが
この様に色々な所に過渡期のモデルならではの所があります。
サドルシートはへたったスプリングを全て新品に交換しボディと同色に塗装します。
中に入るスプリングは別にユニクロメッキをかけています。
細かい所ですがいっしょくたに塗装せずに本来の設定で再生する事が
最後の仕上がりに影響してしまいます。
オリジナルのリアサスペンションはオイル漏れも無くコンディションが良かったので
分解して再塗装のみで仕上げました。
なお、分解組み立てには汎用のスプリングコンプレッサーが必要になります。
ツールボックスの底にはフレームとの干渉を避けるためにゴムのグロメットが付くのですが
実際は全然フレームに当たりません。経年変化で小さくなったとも思えないので
最初から接触はしていなかったと思われます。では何故こんなパーツを付けたんでしょうか?
ツールボックスのビーディングラバーは4本に分割してはめ込みます。
後のモデルでは一本のままではめ込みますがちょっと固いビーディングだと嵌めるのに一苦労します。
此処に限らず固いゴム類は一回熱湯につけて柔らかくすると
簡単に付けられ冷えるに従って形が固定され一石二鳥です。
レッグシールドを付ける前にフレームに配線とケーブルを固定します。
固定用のバンドもタイラップなどは使わずオリジナル通りのアルミバンドでとめます。
出来たらこの時点で配線とケーブルの結線は済ませて長さのチェックを済ませた方が良いでしょう。
レッグシールドを固定してしまってからでは配線とケーブルの長さを変えるのは不可能になります。
フロントフォークに付いているサイクルフェンダーの様な物はSer1&2のみに付くインナーフェンダーです。
実際は見えなくなってしまう部分なのですがきちんと取り付けたい部品です。
はい、グリースニップルも約束通り再生しました。
しかし此処からグリースを注入する人が何人居るんでしょうか?
ブレーキスイッチに入る配線にはブーツの類が全く無く雨天時には少し不安な場所です。
このモデルのペダルリターンスプリングは巻き数が少なく、いまいちペダルの戻りが悪いのが難点です。
しかも以後のモデルとは互換性が無いので辛いところです。
フロアーレールの裏にはレールの潰れ防止にラバーが入ります。
この様に見えない部分でも結構重要な部品は多く、しかもその手のパーツが欠品してる車両が
少なくないのも事実です。見える所は勿論ですが見えない所にも拘って再生していきたいものです。
オリジナル通りのメーター無し状態です。
カッコは良いと思うのですが、色々と難癖をつけてキップを切りたがる人も多いので‥‥
メーターを取り付けた様子です。
57mmでボアアップしたエンジンはトップスピードは80~85km位しか出ませんが、
トルクが増えた分乗りやすくなっています。しかし排気量を上げてしまうと、
二つも有るエアークリーナーが吸入抵抗となりマトモなセッティングが出来なくなってしまいます。
今回は乾式のクリーナーをスポンジ式のモノに換え対処しました。
ガソリンタンクは初期の型ですと、ブリーザーパイプが付いており、以降のタンクとは違います。
しかし現車のモノは残念ながら腐って穴が開いていました。
修理も可能だったのですが予算の都合上SER2の中古のタンクを使用いたしました。

ココからエアーを吸わそうと考えた、イノチェンティー社の開発担当者は
雨が降らない地域の出身だと思われます。

本来LI125にはレッグシールドモールゴムは付かないのですが、
オーナーの希望により取り付ける事となりました。
フェンダーのバンパーもオーナーの好みです。

リアキャリアーは最初から付いていたサビサビのモノをメッキ屋さんに無理を言ってお願いし
再メッキしてもらいました。しかし後からこのタイプのキャリアーはリプロのモノが有る事が判明!

今回は予算の都合上、出来るだけ付いていた部品を生かしての車輌製作となりました。
裏を返せば、ベースの状態が非常に良かったから出来たとも言えます。
やはりベースの良し悪しで最終的な仕上がり、金額等も大きく差が出てしまいますので、
皆様ベース選びは慎重にするべきだと思います。