ベスパ修理

VESPA 150GS(VS-3) を板金で復活2

2014年11月 2日 22:33

はいっ、フロアーです。これで泣かされた方は非常に多いのではないでしょうか。
言わずと知れた難所を今回はバックリと切り取って新たにフロアーを製作する過程をお見せしたいと思います。
前から後ろまでサビによる巣穴が無数あり、ピンポイントの切り継ぎでは長くもたないとの判断で
今回の作業に踏み切りました。

今後世に出て来るベスパ達の程度が自然に回復する事は決してなく、
10年~20年とドンドンと悪化していく一方です。
ビンテージスクーターも減少の一途を辿る事は確実でそれに反比例して価値は
おそらく年々上がって行くことでしょう。その時に避けては通れない場所なので、
いち早く技術を確立して対応していく事がお客様にとっても当店にとっても
大変望ましい事と思っております。

フロアーをフロント下より剥がした図。
中は赤茶色のサビが進行していますが、トンネル上部へのダメージは軽微で充分再生可能です。
パイプが見えますがこれがハーネスの通り道です。ここにも容赦なく水が浸入してハーネスを固着させます。
せっかくなのでと言うよりも交換が必要でしたので後々ご説明させて頂きます。

フレームの外部と内部を遮断する壁もご覧の通りの状況ですので仕切り版製作、交換は避けられません。
上から。トンネルの耳の部分も一部欠損があるのでまず耳を補修してからフロアー製作に移ります。
150GSの流れるラインを無事に復元出来るのか!?次回は本格的な作業に入ることとします。

さて、ちょっと話は変わりまして、我々板金工の使っている工具の一部をお見せしたいと思います。
全部並べていると日が暮れますので・・・。
ハンマーは数十本あり、形が違うのを並べてもざっとこんな感じです。
お気に入りのハンマーは数本程度でそれらをメインに使っています。
左下の木ハンマーは今回のフロアー製作時の様な大きな鉄板のあら叩きなどに使用しました。
後は頭を削ったり柄を切ったりと何でもありです。
茶色の柄のハンマーはスナップオン製で作りが非常に良いのですが、
スクーターには大きすぎるのと価格が大変高価なのであまり買えません。

こちらはあてがねで『ドーリー』と呼ばれる物です。
昔は鉄の塊やトラックのリーフスプリングを削って作ったと言う話を聞きますが、
今は普通に売っているのでそちらを若干使いやすくして作業に使っています。
一番右のものは牛皮の袋に鉄の玉が入っているモノでアールなどを叩く時などに重宝します。

エアー工具は今回無しにしようと思ったのですが、コイツは床製作時に活躍したのでご紹介しておきます。
エアーハンマーと言うもので読んで字の如くブルブルとエアーでハンマリングしてくれます。
ヘッドのみ今回の為に製作しました。

バイスプライヤー各種。色んな形で色んな所をガッチリとキープします。
安いやつは使っているうちにガタがでてきて使いづらくなります。

ハサミ、タガネ、一番右がクリコと呼ばれる仮固定用のリベットです。
リベットといっても一回こっきりではなく何回も使える優れもので本文でも紹介できると思います。

150GS切り継ぎの本丸、床廻り編のスタートです。
フレーム本体、耳部分のアップですがご覧の通りの状態です。

いつもの様にバッサリと切り落とした後、周辺の錆を出来るだけ
カップブラシ等で除去しておきます。これは溶接の為の錆び取りで、
きちんとした錆び取りはブラストで行います。

フレームの耳部分でもちょうどココはコーナーの場所にあたります。
なので、新たに製作する耳部も三次元のアールをつけてたたき出し。

溶接終了。他の切り継ぎ部よりもしっかりとした寸法で作らないと
後々床を付ける作業が大変になるので、とっても神経を使う作業となります。

溶接後別の角度から。アールが綺麗に出ているのが解ると思います。
この場所以外にも何箇所か耳が錆びていたので溶接や切り継ぎで修復。

耳部分が終わったらさっそく仕切り板の製作に取り掛かります。
ココも耳部同様、寸法的には非常にシビアな場所となり、
ワイヤ類のガイド(鉄のパイプ)もこの上を通って外に出て行きます。

製作した仕切り版。日本でいったい何人の人がこんなものを作ろうと思った事か・・・。

仕切り版をスポット溶接で取り付け。寸法通りぴったりです。
さて、これにて床製作の下準備は終了!と思いきや
ワイヤ類のガイドも製作しないと・・・。
なかなか先に進まないこういう所が再生作業の大変な所で、
次から次に何かしら出てきます。

ワイヤーのガイド管をオリジナル通りの寸法で新たに新調しました。
配管にアールをつける時は慎重にやらないと潰れてしまいます。

配管画像の切り口アップ。向かって右側よりリヤブレーキ、
真ん中はシフト2本、左側がクラッチ。
中央の配管だけ出口を横長に潰してありますがこれもオリジナル通りです。
この時点では配管は少し長めに切りシロを残しておき、
床を貼り終えてからにカット、最後にロウ点けで固定します。

ハイッ!床張替え終了。
と、言いたい所ですが事はそう簡単には運びません。
コイツは今回の張替えの原型を取るためのドナーです。
車体はメッサーなのですが、恐ろしく程度が良かったので白羽の矢が立ちました。
次回はコイツの床部分を使っての『FRPのメス型製作』をお伝えします。


メス型制作の段取りを簡単に説明しますと、

1・ゲルコートが隙間に流れないようにマスキング。
2・離形剤となるワックスをしっかりと塗りこむ。
3・水性のブルーフィルムを塗る。

という手順で進みます。画像は隙間をマスキング(アルミテープ)してワックスまで塗った状態です。

ゲルコートを刷毛で塗っていますがその前に先ほど触れたたブルーフィルムを塗布してあります。
これは型を外す際に作業をやりやすくするためのもので必需品ではありません。
フィルムは水性なので離形させた後水洗いで落とします。

ゲルコートが程よく乾燥したところで手際よくFRPを張り込んでいきますが、
今回は冶具にするため3プライとちょっと厚めに張り込みました。ポ
イントは予めFRPクロスを床の形に切っておく事が重要です。
最近ではFRPの入手も簡単になりましたので挑戦されている方は多いのではないでしょうか?

エアーを送り込みながら大胆かつ繊細にFRPを外していきます。
画像で見える青っぽいのがブルーフィルムでコレを水道で洗い流します。
これが『鉄板で作るフロアーの為の冶具』となります。
まちがってもこのFRPをフロアー補修に使うような事はウチではしませんのであしからず...。

『鉄板』の登場です。厚さ1ミリを使用しました。
こいつをこれから手叩きで料理していくわけですが、
アルミと違ってかなり力が必要な作業になってきます。

二次曲線なら簡単ですがご承知の通り、150GSのフロアーは3次元の曲線で構成されていて
気が遠くなるような数を打ち込んでいきます。

少し打っては確認してまた打ち込む...これが板金という作業です。
時には先ほど制作した冶具を使いながら形を三次元化していきます。

最初の平らな鉄板よりはだいぶ形になってきました。
この頃からフレームにあてがって作業を進めていきます。
この時点では鉄板の余白は切り落とさず耳をつけてあります。

この工具は一体?
これは『クリコ』と呼ばれるリベットの一種で、取り外しが出来るリベットと言えば判り易いでしょうか。
フレームと今回制作している鉄板の位置を合わせて穴を開けます。そこにこのクリコを刺して留めます。

普通のリベットと同じ働きなんですが、仮組みを数百回行う作業ですと
一回一回使い捨ては出来ませんのでこいつを使用します。
仮組み最中はこんな感じです。鉄板に無数に付けられた焦げ後が画像を観て頂くと判りますが
これは叩いた鉄板に『お灸』をすえている所です。

簡単に説明しますと高温のカーボン棒などを鉄板に押し当てると
熱の作用で瞬間的に金属が膨張します。
それを濡れた雑巾やエアーで瞬間的に冷やす事によって鉄板自身が縮もうとします。

その性質を利用して叩きすぎてヨレヨレになった鉄板を元のギュとした状態に締めてあげる、
この作業を『絞り作業』と言います。

耳も切り落とされてリブ立てまで終了。だいぶカッコがついてきました。
ここまででも相当な時間を費やしていて担当が腕がパンパンだと漏らしていました。

リブも手叩きで仕上げてあります。
まだ若干の微調整が必要ですがこういう所も手を抜かず
きっちりやる事こそ重要です。

このパイプ3本はワイヤーの為の配管であることは前にも述べてありますが、
これをボディーに固定させてあげます。ココは重要なポイントですがオリジナルでは溶接を使用せず
ロウ付けでここを止めます。
今回はオリジナルを見習ってロウ付けにしました。

さらに今回制作したフロアーもココの部分をあわせる必要があります。
しっかりとハンマリングで形を作り、仮組みを繰り返していきます。画像はフロアーを装着してみた所です。

ブラストも終了して仮合わせの最終確認。クリコはこんな感じで使います。
とりあえず手前味噌で申し訳ないですがバッチリと決まりました。ここからは後半戦です。
スポット溶接を経てリブを貼り付けていきます。

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